中学受験のように二人三脚というわけにはいきませんが、高校生になっても親のアドバイスを「少しは」参考にしてくれます。
たしかに何十年も前の経験ではありますが、勉強方法の本質は変わっていないように感じています。
そんな背景で、親から子へアドバイスしたことをログとして残しておきます。
なお中高一貫校に通う場合のスケジュール感ですので、もし高校受験をされている場合は、別途考慮が必要です。
まずは数学からです。
身につけてほしいこと
入試問題は、受験生と大学の対話のツールです。
そこには、大学の明確な意思があります。その意思を、大学はホームページなどで公開しています。
志望大学を決める際にも、アドミッションポリシーなどに目を通すようにアドバイスしました。
たとえば東京大学であれば、『高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと』として、高校生へのメッセージを伝えています。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_01_18.html
東京大学を受験するかどうかは別としても、大学というところが高校生に何を求めているのかは参考になるので、一読するように伝えました。
受験勉強は、合格が目的ではなく、その先の大学で学ぶための準備であることを、可能な限り意識づけしようと考えていました。
数学は,自然科学の基底的一分野として,人間文化の様々な領域で活用される学問であり,科学技術の発展に貢献するだけでなく,社会事象を客観的に表現し予測するための手段ともなっています。そのため,東京大学の学部前期課程(1,2年生)では,理科各類の全学生が解析・代数を必修科目として履修し,文科各類の学生も高度な数学の授業科目を履修できるカリキュラムが用意されています。
本学に入学しようとする皆さんは,入学前に,高等学校学習指導要領に基づく基本的な数学の知識と技法を習得しておくことはもちろんのことですが,将来,数学を十分に活用できる能力を身につけるために,次に述べるような総合的な数学力を養うための学習を心掛けてください。1) 数学的に思考する力
様々な問題を数学で扱うには,問題の本質を数学的な考え方で把握・整理し,それらを数学の概念を用いて定式化する力が必要となります。このような「数学的に問題を捉える能力」は,単に定理・公式について多くの知識を持っていることや,それを用いて問題を解く技法に習熟していることとは違います。そこで求められている力は,目の前の問題から見かけ上の枝葉を取り払って数理としての本質を抽出する力,すなわち数学的な読解力です。本学の入学試験においては,高等学校学習指導要領の範囲を超えた数学の知識や技術が要求されることはありません。そのような知識・技術よりも,「数学的に考える」ことに重点が置かれています。2) 数学的に表現する力
数学的に問題を解くことは,単に数式を用い,計算をして解答にたどり着くことではありません。どのような考え方に沿って問題を解決したかを,数学的に正しい表現を用いて論理的に説明することです。入学試験においても,自分の考えた道筋を他者が明確に理解できるように「数学的に表現する力」が重要視されます。普段の学習では,解答を導くだけでなく,解答に至る道筋を論理的かつ簡潔に表現する訓練を十分に積んでください。3) 総合的な数学力
数学を用いて様々な課題を解決するためには,数学を「言葉」や「道具」として自在に活用できる能力が要求されますが,同時に,幅広い分野の知識・技術を統合して「総合的に問題を捉える力」が不可欠です。入学試験では,数学的な思考力・表現力・総合力がバランスよく身についているかどうかを判断します。
(出所:東京大学HP 『高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと』)
受験勉強で注意すべき5つのこと
受験勉強には、鉄則があります。人それぞれではあると思いますが、私自身が持っていた鉄則をアドバイスしました。
①登る階段を意識する
勉強の多くは、積み上げ型です。特に数学は、その色が濃く出る科目です。
参考書・問題集をアドバイスする際にも、そのことを意識して伝えました。
②優先度をつけて絞り込む
問題集にある、すべての問題をとにかく解きまくるというのは、普通の高校生には時間のムダになりかねません。
数学の場合は特に、良問に絞り込んで、「考え方」や「着眼点」を理解することが重要になってきます。
参考書や問題集のまえがきには、その本の「使い方」を書いてあるので、その部分をしっかりと読んでから取り組むように伝えました。
③スケジュールを確認する
高2から受験勉強を始めるケースが多いようです。
2年間の長丁場、どのようなタイミングで、どのような勉強をするのか。大人と違って、高校生ではまだスケジューリングが苦手なことが多く、漫然と進めがちです。この部分については、アドバイスというよりも、親からの問いかけによって、スケジュールを意識させるように仕向けました。
④インプットとアウトプットのウェイトを考える
最終的には、受験本番でどれだけのアウトプットを出せるかが鍵です。
数学は特に、インプットよりもアウトプットのウェイトが大きい科目です。
アウトプット力を高めるために、この問題集がどのように役立つのかを伝えました。
⑤スイッチを切り替える
現代において、勉強の大敵はスマホです。
私の時代の大敵はテレビでしたが、勉強部屋とは物理的に離れた場所にあったので、意識しなくても切り替えができていました。
しかしスマホだと、そうはいきません。常にそばにあるので、ついつい触ってしまいがちです。
そこで、勉強する時はスマホをリビングに置いておくなど、気持ちの切り替えをしっかりするようにアドバイスしました。
勉強法とおすすめの参考書・問題集
1.基礎習得段階
一番の基本は授業と教科書です。
それに加えて、教科書の傍用問題集が学校で配られました。
定期テストの範囲を宿題として出されるのですが、なにせ分量が多いんですよね。
計算力をつけるには、一定量の演習が必要なことは理解できます。
しかしあまりの分量に、とにかく「こなす」ことに精一杯で、理解することに力を割けていないことは、傍で見ていても分かりました。
解くべき問題を絞り込んで、宿題として指定してくれるとありがたいのですが、そうしないのは疑問です。
解くべき問題を見定められるかどうかは、数学教師の力量だと思います。
親としては、解けない問題に時間を割かなくていいから、スキップしろとアドバイスしました。
その代わりに、このあと紹介する参考書の「基本例題」の解説を読んで、自分でも解いてみることを薦めました。
2.典型問題演習段階
学校では、教科書と傍用問題集に加えて、チャート式が配布されました。
授業で学習する際には、傍用問題集と並行して、チャート式の「基本例題」だけを解くようにアドバイスしました。
その際に、「指針」に書かれていることを自分なりに理解することも合わせて。
その後、高2から本格的に受験勉強を始めるにあたっては、もう一度、チャート式の「基本例題」と「重要例題」を進めることで、解法の定石を理解するようにアドバイスしました。
ここで重要なことは、典型問題で解法の定石を理解して、使えるようにすることです。
学校によっては、チャート式ではなく、啓林館のFocus Goldという参考書を配布するところもあるようですが、基本的な考え方は同じです。
3.錬成問題演習段階
チャート式の例題のような典型問題と、難関大学の入試問題には、大きなギャップがあります。
難関大学の入試問題では、パッと問題を見ただけでは、解法を確信できることはまずないということです。
理由としては、
・複数の単元の融合問題になっている
・複数の解き方があるが、解き方によってはドツボにはまる可能性がある
・設定が複雑で論理的な道筋を問われる
といったところがあります。
過去問を数多く解くことで、こうしたギャップを埋めることになるのですが、その前に「入試問題へのアプローチ」を身につける必要があります。
そこで薦めたのが、この本です。
京都大学ではない難関大学を志望する高校生にも、とても参考になる本です。
過去の入試問題を例として、どういう着眼点を持てば良いのか、どういう解き方を進めれば良いのかを、理解→計画→実行→検討という形で解説しています。
過去問演習に入る前に、トライするには最適な本です。
4.過去問演習段階
過去問演習の目的には、大きく2つあります。
・実際の試験時間の中で、捨て問を見極めて、解ける問題に時間を配分する
・志望大学の出題傾向に慣れる
よほど数学が得意な人は別として、入試の数学では満点を目指すのではなく、合格点を目指すというのが王道です。
そのためには、時間ばかりかかって解ききれずに得点できない問題を捨て、完答もしくは半答で得点できる問題に時間をかけることが重要となってきます。
そのためには、実際の入試形式になっている過去問を使う必要があります。
通常の赤本や青本と呼ばれる過去問です。
直近数年分を実際の入試の制限時間の中で解くことで、捨て問を避けながら時間配分する練習をしていきます。
いっぽうで、志望大学の出題傾向に慣れるためには、単元別に過去問を数多く解いてみる必要があります。
そのためには、数学だけ25年分を載せたような過去問や、志望大学の過去問への対策を目指した問題集を利用します。
5.分野別強化
整数や確率、領域の問題などは、重点的に演習したほうが良い場合があります。
実際に我が家でも、整数と確率は苦手意識が強い分野でした。
予備校の季節講習を受講するのも手ですが、次のような分野特化の問題集を使うのも効果的です。
6.もの足りないお子さんには
我が家の場合、数学が得意というわけではないので、以上の演習でいっぱいいっぱい。それ以上は、とてもとても。
しかし世の中には、全然もの足りないという高校生もいるわけで。
もしも必要ならと想定していた参考書・問題集をいくつか。