デザイン思考の流行に違和感
ビジネスの世界では、最近、デザイン思考なるものが流行しています。
「デザイン思考=イノベーション」という発信で、後押しする企業もたくさん出てきています。既存事業の停滞感により、新規ビジネス開発を進める必要を感じている企業が、デザイン思考に飛びついているようです。
この流れは、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)ブームの時と同じ匂いを感じてしまいます。
デザイン思考のブームは、米国のデザイン企業「IDEO」に端を発します。
IDEOについて、日本で書籍の形で紹介されたのは、2002年の「発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法」が最初だったと記憶しています。
その後、IDEOのCEOであるティム・ブラウンが、デザイン思考そのものを紹介する書籍を出し、それがブームの火付け役になっています。
誤解のないように言うと、私自身、デザイン思考そのものを否定するつもりはありません。
デザイン思考を、新規ビジネス開発に適用しようとしていることに、違和感を感じているのです。
デザイン思考が得意なのは
デザイン思考が得意な分野で非常に分かりやすいのは、Webサイトの画面改善です。
デザイン思考では、デザインのプロセスを「empathize」「define」「ideate」「prototype」「test」という5つに分解して進めます。Webサイトであれば、ユーザがどのように利用しているかを観察して、課題を見つける。その課題の解決方法のアイディアを出し、プロトタイプとして速攻で作り上げる。それを実際に利用してもらって評価し、さらに改善のサイクルをまわす。
ざっと、こんな感じです。
乱暴な言い方かもしれませんが、製品やサービスの改善において、デザイン思考は有効に使えると思うのです。
大いなる目的の見えないアイディア出し
デザイン思考を活用した新規ビジネス開発の事例が語られることがあります。
といっても、それほど多いわけではないのですが。
自社の競争力に直結するはずの内容ですから、あまり大っぴらに話したくなるとも思えませんし。
さて、そうした事例を聞いて感じるのは、その新規ビジネスの「大いなる目的」は何なのだろうかということです。
一昔であれば、何人かの社員が新規ビジネスのアイディア出しをブレインストーミングで行って、そこからフィルタリングして残ったようなものです。社会をこう変えたい、顧客の思いをこう実現したい、といった目的を感じられません。ただ、既存の部分にちょっとした変更を加えただけとか、センサを使って自動でアクションを取るようにしたとか。
それって、本当に望んでいる新規ビジネスなんだろうかというのが、率直な感想です。
令和の時代に求められるのは0→1
これからの時代に求められているのは、0から1を生み出すことだと信じています。
いろいろな社会課題が生じていて、解決の前例もないような時代に求められるのは、既存の延長の解決策ではなくて、まったく新しい解決策だと思うのです。
そんな違和感を感じていた時に出会ったのが、この本です。
新たなビジネス検討をミッションとして負っている方は、デザイン思考に取り掛かる前に、まずはこの本で「デザイン」を考えてみてはどうでしょうか。