東大の発表を読んで思うこと

大学受験

方針転換?

『東京大学の入学者選抜に関する考え方について』と題して、東京大学が4月27日に発表しました。
https://www.u-tokyo.ac.jp/stu03/e01_admission_method.html

3月のブログで、東大が2021年度入試の段階では民間試験を合否判定に使わないという発表をしたことに触れました。
そこでは、受験生が民間試験を受けることは必須として、その成績は入学後の能力の伸びを調べるデータなどに活用するという主旨でした。
それが方針転換されたというのが、新聞でも取り上げられています。

発表された内容

発表された文章の要旨を、もう一度確認してみましょう。
①4技能評価は意義あること
②公平公正の担保が非常に重要
③④国大協のガイドラインに沿って活用方法を検討
⑤『高大接続改革の理念からすれば、1点刻みの入試に高等学校教育が支配されてしまう状況から脱却し、大学入学以降に英語力を伸ばす機会が提供され、卒業時での学生の能力を担保することが重要』
⑥ワーキンググループで検討して、あらためて発表(今年の夏には方針が見えるはず)
ここから見えてくる意図はなんでしょうか?

ISOJIN流の勝手な解釈

①は、4技能評価が意義あることで、その流れが後退することはないことの宣言です。この点は3月の時点での発表と同じです。
②の懸念についても、引き続き同じことを述べています。性質の異なる民間試験の結果を、横並びで比較はできないということを、あらためて述べているのでしょう。
③④が、前回とは異なる部分で、国大協のガイドラインには従うという主旨です。つまり、民間試験の結果を『2次の出願要件』とするか、『加点』とするかは、最低でもどちからは踏まえるということです。
そして⑤は、変わらぬ高大接続改革の理念を確認しているのですが、裏を返せば高校教育が民間試験対策となることを牽制しているとも取れます。少しでも民間試験での点数を良くしようという授業になってしまったのでは、本末転倒なのは誰もが納得することです。
これらを読むにつけ、東大はほとんど方針転換していないと、私自身は感じています。

つまり、『受験生が民間試験を受けることは必須』という表現から、『高校で習得すべきレベルを出願要件』に変えるだけではないかと思うのです。
たとえば高校卒業レベルということであるなら、英検2級程度を出願要件としておけば、少しでも民間試験の点数を良くしようというドライブはかからなくなると思います。多くの東大受験生は、英検2級レベルであれば簡単にクリアすることと思います。中には、英検準1級レベル以上の受験生もいると思いますが、出願要件だけであれば、そこで2次試験の差がつくわけではありません。そうであれば、特別な民間試験対策を施す必要もありません。

あとは、受験機会という観点からの公平性ということで、対象とする民間試験を絞る可能性はあるかと。
中高生にとって、もっとも馴染み深い英検は、試験会場が全国に張り巡らされているのは強みですが、年に3回というのでは、部活や学校のイベントにスケジュールが左右される高校生には不利になります。
『英検CBT』の開発が進んでいますが、CBT形式になることで月1回の実施回数に増やすそうです。まずは今夏から利用開始できるように英検2級、準2級、3級から開発されていますが、英検2級レベルを出願要件にするのであれば、2021年度入試でも十分に間に合うこととなります。
他には私立大学を受験するためにTEAPを受ける受験生に対しては、そのスコアをそのまま利用できるようにするのではないかと思います。
英検2級レベルで、これらの民間試験の結果を出願要件として利用するのであれば、横並びで利用しても現実的にはほとんど問題は起きないと思います。

これらの民間試験を活用して、大学入学以降に英語力を伸ばすための基礎ができているかだけの確認にとどまるのでしょう。
そういった意味では、3月の発表から、それほど大きな方針転換をしているとは思いません。
東大はあくまで国大協のガイドラインには沿った上で、高大接続改革の理念を踏まえようとしているだけだと理解しています。

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