東大国語の入試問題2022

東京大学 大学受験

今年のテーマは

第一問の出典は鵜飼哲氏の『ナショナリズム、その〈彼方〉への隘路』でした。

この鵜飼氏の文章、もともとはナショナリズムの教科書的に有斐閣から出版された『ナショナリズム論・入門』に掲載されていました。

大澤真幸氏や姜尚中氏など、名の知れた執筆者が並んでおり、大学生でも手にした人が多かったのではないかと思います。

しかし出版されたのが2009年8月であり、なんでそんな昔の文章を2022年の入試に取り上げたのだろうかと思ってしまいました。

その後、予備校の解答速報を見たところ、出典が『まつろわぬ者たちの祭り―日本型祝賀資本主義批判』となっているではないですか。

なるほど、2020年4月に出版された鵜飼氏の『まつろわぬ者たちの祭り―日本型祝賀資本主義批判』に、再収録されていたんですね。

「ナショナリズム」というテーマが、依然として世界を覆う、大きな問題であるということが、2022年の入試で取り上げられたことで、あらためて理解できました。

解答するのは難しいかも

さて入試問題として見た時に、受験生の皆さんはどう感じたのでしょうか。

高校生がイメージする「ナショナリズム」というのは、多くの場合、愛国主義とか国粋主義とかに近いのではないかと思います。

ナショナリズムの訳の一つが国粋主義であり、自国第一で戦争に突き進むような根底にある考え方と感じてしまっているかもしれません。

しかしナショナリズムの根幹は、もう少し違うとらえ方ができます。

ナショナリズムの根幹には、ネイション(nation)、つまり国民とか民族とか国家というものがあります。その国家を統一・独立させ、発展させていこうとする活動が、ナショナリズムです。

今回の問題文では、さらに語源にさかのぼり、「生まれる」とか「自然」というところから、ナショナリズムを捉えています。

そして国家に属するという国籍が、生地や血統にもとづくという面で、生まれが同じという集団を生み出しています。

そのことが、生まれが違うということで排他性を生むということの大きな要因になっているのです。

しかし国家というものについて、その土地のどこまでをその国家とするのかは、ただ単に人為的に決められたものであり、「自然」なことではありません。

それを「自然なもの」としているだけなのだと。(つまり「自然化」しているだけだと)

だから、ある時、突然にそれが覆されることがありうるというのが最後の段落になっています。

それが最初のカイロでのエピソードで、日本人が日本人から排他されることを語った意味だと思います。

生まれの同一性が排他を生み出すというところは理解できても、「自然」というところをどのように理解するかは難しかったのではないかと思います。

でも、テーマとしては面白い現代文の問題だったかな。

2020年の問題文のような、衝撃さはなかったけど。

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