2019年という、この一年を、本を題材に振り返ってみます。
世界は良くなっている
2019年を代表するのは、この一冊だと思います。
『FACTFULNESS』
そもそもは、この記事がきっかけで読みました。
https://unleashmag.com/2019/01/07/visible-small-progress/
センセーショナルなニュースに踊らされることなく、小さな進歩を積み重ねていこうと心に刻んだ一冊です。
そして「ミライは決して捨てたものじゃない」ことを、2019年のモットーとして歩むきっかけになった本でもあります。
科学から逃れられない現代へ向けて
『科学と非科学 その正体を探る』
講談社のPR誌『本』に2018年の1月から12月に連載された「科学と非科学ーその間にあるもの」を、新書としてまとめ直したたサイエンスエッセイです。
2019年の東京大学の入試で出題されたことでも知られています。
科学の進歩とは切っても切れない関係にある現代で、科学と非科学の二元論でもなく、そのはざまにあることの意味を考えさせられる、とても良質なエッセイです。
大学入試を巡る混乱
『検証 迷走する英語入試――スピーキング導入と民間委託』
大学入試での民間試験採用について、いろいろと思うところもあり、動向を追っかけていました。
採用される形はどうあれ、英検はしっかりと準備してきていたものの、
最終的には、文部行政の迷走で一番ワリを食ってしまった結果です。
当初から民間試験採用に疑問を呈し続けてきた先生たちの論考です。
これからの時代に求められるのは
『ニュータイプの時代』
これからの時代に求められる人材像は、いろいろなところで語られています。
共通しているのは、吸収が速く、知識を蓄え、しっかりと処理できる従来型の人材ではなく、解のない世界でアクションを取れる人材だということです。
そんな人材像を「ニュータイプ」として解説した本書は、分かりやすく参考になります。
高付加価値へのシフト
『日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義』
生産性の話をすると、効率を上げろという議論と勘違いしていることが多々あります。Amazonの書評にも、そのような誤解をしたコメントが載っていたりします。
生産性は、分母となるインプットと分子となるアウトプットから決まりますが、効率性の議論は分母となるインプットをいかに減らして、同じアウトプットを出せるかということです。
それに対して著者が言う生産性は、分子となるアウトプットをいかに高めていくか、場合によっては質を転換して付加価値をどう上げていくかという議論です。
同じレベルの成果を出せる人材なのに、中小企業に属しているというだけで、大企業と比較して安い給料で働かざるを得ない現実をどう受け止めるべきか。
人手不足が深刻化する中で、高い給料を出さなければ人材が集まらなくなっているという現実。
どういうミライを描くべきかを、厳しいながらも指摘しているのが本書です。
50万人の記述答案を、大勢のアルバイトに「機械的な」採点をさせる。
これとは対極にある姿が、ミライの日本人の姿だと思う。
成熟社会への道筋
『人口減少社会のデザイン』
「2050年、日本は持続可能か?」というテーマで、AIを活用した日本社会の未来に関するシミュレーションを京大と日立で実施していました。
その中心的人物である広井教授が、人口が減少する中で、成長モデルではなく、成熟モデルへと日本が転換していかなければならないことを、さまざまな視点から指摘しています。
選択のタイムリミットは迫っている。アクションを取らなければ間に合わない。でもアクションできれば、日本のミライは変わる。
そう思います。
時代が追いついてくる
『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』
経済学の世界では有名な宇沢先生を追った本です。
東京大学の先生としての宇沢弘文を知っていても、シカゴ大学で業績を残していたことは意外に知られていない。
人々に寄り添うための経済学を志向した先生の考えに、持続可能性を重視し始めた時代が追いついてきた。
知性と自由
『思いつきで世界は進む』
橋本治という人物について、そして彼の遺した文章について、何かを語ることはとても難しい。
http://www.webchikuma.jp/category/hashimotoosamu
Webちくまのサイトにも、彼の文章がそのまま遺っている。
そこから知性を持つものの自由さを「感じて」、そして自分なりに「考える」ことしか、僕にはできない。
いい意味で人を驚かすことのできるミライ
『岩田さん』
天才プログラマーであり、任天堂という会社の社長を務めたビジネスマンである岩田聡氏の根幹には、人としての「岩田さん」があるのだということを伝えてくれる。
いい意味で人を驚かすことを続けていければ、きっとミライは開けると感じさせてくれる。
学校はミライのためにある
『ミライの授業』
2016年に出版された瀧本哲史氏の本。
『僕は君たちに武器を配りたい』がベストセラーとなった瀧本氏が全国の中学校で特別講義を行った内容をまとめています。
天才とも言われた瀧本氏が、2019年8月に亡くなったことを知った時、驚くとともに、彼の言葉を読むことがもうできないことの寂しさを感じずにはいられませんでした。
武井涼子氏による追悼記事があるので、ぜひ読んでもらいたい。
https://forbesjapan.com/articles/detail/29132
この本で、瀧本氏は中学生たちにミライを託したのだと思わずにはいられません。
「ミライは決して捨てたものじゃない」ことを、2020年も胸に抱いて進んでいきたい。