英検を気の毒に思う

合格 大学受験

文部科学行政に、今さらながら失望

もともと期待はしていないのですが、今さらながらに失望しました。
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/11/01/1422381_01.pdf
無理矢理にでも押し通そうとしてきたのに、ここにきて一転。
遅きに失する決定であったことは、間違いない。
なんのための外部試験導入だったのだろうかと、あらためて思います。
そもそも、英検・GTEC・TEAP・TOEFL・TOEICなど目的の異なる複数の試験を、横並びで使おうとした無理。
共通テストでリスニング問題の構成と比重を変えただけでも、使える英語力を測定するためには進化しているという感触。
4技能を測るという主旨は理解するものの、外部試験のライティングやスピーキングのテストが、それほど優れたものなのかという疑問。
それでも試験料の負担がかかり、日本全国と言う視点で見ると開催地にも難がある外部試験を、なんとか組み込もうとした考えには、とても共感はできません。

不透明なここ1ヶ月の動き

10月はじめごろから、なんとなく不穏な流れは出ていたように思います。
英検から10月2日に発表した内容がすぐに削除され、その後、予約期間や返金期間の変更の発表が10月7日に出されました。
10月2日の発表を実際に目にしたのですが、すぐに削除されたため記憶だけでたどると、英検側から文部科学省に問い合わせをしているが、明確な回答を得られないといった主旨でした。
それが何を意味するのかは、ピンと来なかったことは記憶しています。

その後、全国高等学校長協会の緊急シンポジウムが開かれた際、英検など5団体は出席したものの、GTECだけは欠席したとのこと。

大学入学共通テストに導入予定の英語の民間試験を巡り、経済格差や地域格差が解消されていないなどとして、9月に文部科学省に活用延期を要望した全国高等学校長協会(全高長)は21日、東京都内で緊急シンポジウムを開いた。
(中略)
「英検」を運営する日本英語検定協会など5団体も参加。試験会場について「全国の大学と全力で調整している」「20年は東京五輪があって会場が借りにくい。正直苦戦している」と説明した。
実施6団体のうち多くの受験者が見込まれる「GTEC」を運営するベネッセコーポレーションは欠席した。萩原会長は同社から「現時点で新たな情報を公表できない」と理由を告げられたとした上で「公的な制度の実施を担う立場にある者として説明責任を果たしてほしかった。残念だ」と述べた。

出所)2019年10月21日 日本経済新聞

これ、10月21日の出来事です。

そして、共通IDの受付を開始する前日、10月31日にはGTECは会場数を発表しているのです。(具体性に欠けますが)
https://www.benesse.co.jp/gtec/fs/cuet/news/pdf/01.pdf
10日後に発表を予定していたのだから、ほぼ内容は固まっていたであろうに。
そうであれば、10月21日の時点でも説明をすることはできたのではないでしょうか。

公正さに不安の残る高校会場を利用するとか、GTECについては、いろいろな話も出ていました。
そうした質問が出た場合に答えられないから、シンポジウムを欠席したと勘繰られてもしかたない。
GTECを運営しているベネッセの姿勢には、正直なところ残念としか言いようがありません。

英検の姿勢は素晴らしかった

ここ半年の英検の姿勢は、すばらしかったと思います。
出来る限り情報を開示しようと努力していました。
この7月に2020年の実施概要を発表した際も、8月に生徒や保護者に対する説明会を主要都市で開催し、来場できない人に対しても、その後に動画で公開するなどの対応を取っていました。
S-Interviewは一部の該当者しか利用できないことについても、早い段階で公表して混乱を招かないように努力していたことがうかがえます。
予約申込や予約金について、いろいろな意見も出ていたようですが、自らの資金で運営をしなければならない団体であれば、決して非難を受けるような進め方ではなかったと思います。
高校ではなく外部の会場を確保しようとすれば、とうぜんお金がかかります。
英検を受けようとしてくれる生徒たちが滞りなく受検できるようにするためには、その地域ごとの受検者数をあらかじめ把握しなければ、会場を確保することもままなりません。
そうしたことを考え抜いた上での対応であっただろうことは、想像に難くありません。
ここまで努力していたのに、民間試験の導入は延期となったことは、英検が気の毒でなりません。
上から目線ではないのですが、ここまでの英検の姿勢は、本当にすばらしかったと思います。

はてさて4年後

「大学入試における新たな英語試験」は、令和6年度から実施されるそうです。
この英語試験は、はたして民間試験なのでしょうか。

東京外国語大学は、ブリティッシュカウンシルと英語のスピーキングテストを開発しています。
http://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/3154
2019年度の国際日本学部入試で適用されたBCT-Sは、2021年度から全学で適用されるそうです。
http://www.tufs.ac.jp/admission/navi/exam/navi_18073001.pdf

そもそも国立大学の個別試験では、もともと英作文などライティングの試験を課しているので、それにスピーキングのテストを加えることができれば、4技能を測るという目的には適うのではないでしょうか。
そうなると、わざわざ共通テストの段階で、4技能だけの目的で民間試験を導入する意味がなくなりそうです。

私立大学の場合には、以前からTEAPやTOEFLなどの民間試験を組み込んでいたところも多いので、わざわざ共通テストの枠組みで民間試験を考える必要もないはずです。

はたして4年後の英語試験は、どうなるのでしょうか。

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