大学入試の常識が変わる

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早稲田大学の発表から

5月30日に、早稲田大学が2021年度の入試について発表したことに関して、試験問題の変更についてはこれまでも触れてきました。


早稲田大学の入試改革(続編)
早稲田大学の会見 5月30日に、早稲田大学が2021年度の入試について発表したことは、先週のブログで書いたとおりです。 そして6月7日に、早稲田大学が会見を開き、2021年度の入試について説明をしたそうです。 ホームページで公表しただけでは...

しかし、その発表には、もう一つ大きな変更が含まれています。

(2) 募集人数
300 名(政治学科100 名、経済学科140 名、国際政治経済学科60 名)とします。
※従来450 名(政治学科150 名、経済学科200 名、国際政治経済学科100 名)

(4) その他
・従来から実施している?学?試センター試験利用入試については、2021 年度以降も「大学入学共通テスト」を利用した入試として引き続き実施しますが、募集人員を50 名(政治15 名、経済25 名、国際10 名)に変更します。
※従来75 名(政治学科25 名、経済学科35 名、国際政治経済学科15 名)

出所:https://www.waseda.jp/inst/admission/assets/uploads/2015/06/2021ad_change_pse.pdf

政経学部では、募集人数を大幅に減らすというのです。
これは、どういうことを意味するのでしょうか。

現状の募集人員は?

この発表では、『一般入試』と『「大学入学共通テスト」を利用した入試』の2つの募集方法の人数を減らすことに言及しているだけです。
早稲田大学の政経学部は、これら以外にも募集方法があります。

現在の政経学部での募集人員
一般入試:450名
センター利用:75名
附属・系属校の推薦:285名
指定校推薦:90名
グローバル入試(AO入試):50名
EDESSA:30名

政経学部の募集人員としては、合計で980名になっています。
このうちの450+75=525名分、つまり54%が今回の発表で触れられている変更の対象です。

『附属・系属校の推薦』というのは、早稲田高等学院や早稲田実業などの附属高や系属校からの推薦入試です。
『指定校推薦』というのは、早稲田大学とは直接的な関係はない進学校から、毎年一定数を推薦入学枠として受け入れているものです。
『グローバル入試』というのは、いわゆるAO入試と言われるものです。通常の学科試験ではない方法での入試となります。
『EDESSA』は、英語学位プログラムで、日本語能力を必要としないAO入試と考えれば良いかと思います。
こうしてみると、すでに4割以上の入学者が推薦やAOでの入試であることが分かります。

定員厳格化の影響

おそらく、この発表の裏では、首都圏の大規模大学を中心とした定員厳格化の流れも影響していると思われます。
それとともに、「Waseda Vision 150」で掲げている将来的な学部生数の数値目標もあります。ただし、こちらはもう少し長いスパンでの影響と考えたほうが良さそうです。

文部科学省は、2016年から3年かけて入学定員超過による補助金不交付の基準を厳しくすることとしました。早稲田大は大学全体では2016年の時点で2018年基準(入学定員充足率1.10)をすでにクリアしています。しかしながら、学部別にみると2016年は2018年基準を多くの学部で達成しているものの、政治経済、基幹理工、創造理工、先進理工、社会科の5学部では達成できていませんでした。
(中略)
さて、それでは2018年度以降の早稲田大入試はどうなるのでしょうか。早稲田大には文部科学省が課した基準とは別に大学独自基準の学部生数減少の目標値があり、この数値を達成するためにはこれからも合格者数を徐々に減らしていかなければならないことが予想されます。つまり、地方からのハイレベル層の受験生流入、首都圏受験生のチャレンジ志向の拡大が考えられること、さらにはこれからさらに学部入学者数を減らす意向が大学側にあること等から、現在以上に厳しい入試が繰り広げられるであろうと予想されます。

出所:https://www.yozemi.ac.jp/nyushi/data/waseda/waseda_jokyo_6.html

当面の入試ではまず、文部科学省から課されている定員厳格化の影響があります。
政経学部の定員が900名なので、980名というのは定員の1.09倍。
2019年度からは1.0倍に抑える必要があるので、80名は募集人員を削る必要があります。

一般入試で450名から300名で150名を減らし、センター利用で75名から50名で25名を減らすので、175名が減ることとなります。
そのうち、80名が定員オーバー分に相当するため、この80名分は募集人員全体から減らす必要のある人数となります。
しかし、残り95名分はどこへ行くのでしょうか。

今後の潮流

早稲田大学は2015年12月2日、入試改革の方向性と具体的な展開について発表した。記者説明会では、2018年度入試で初めて学部横断型AO入試を導入することなどを説明。鎌田薫総長は、今後20年をめどに、現状、全体のおよそ4割を占めている推薦・AO入試による入学者の割合を、6割程度まで増やす考えを表明した。

出所:http://between.shinken-ad.co.jp/hu/2015/12/post-11.html

ここからカンガエラれることは、残り95名分はAO入試や推薦にシフトするのではないでしょうか。
その結果、一般入試+センター利用が350名で定員900名の39%で、つまり4割。
残りの推薦・AO入試による入学者が6割になって、割合が逆転するわけです。

これまでは、なんだかんだといっても、一般入試が主流で、推薦・AO入試は一部という見方が常識でした。
しかし、今後は推薦・AO入試が主流へと移っていくことが予想されます。
これまでとは違った見方をしていく必要があります。

少子化の流れの中で、早稲田大学を第一志望とする優秀な学生を確保したいという意志もあると思います。
従来の東大や一橋大などの国公立大学との併願で、国公立大学の結果が残念だったから早稲田大学へという学生よりも、第一志望の優秀な学生を早い段階で確保したい。
そうであれば、推薦入試やAO入試で早い段階で入学を決めてもらうほうが確実です。

国公立大学と難関私立大学との併願を考えている受験生にとっては、一般入試枠が減ることで、難関私立大学がさらに狭き門となる可能性があります。
ただし、一般入試の試験内容の変更は、国公立大学との併願者に有利かもしれません。そうなると、私大文系に絞っている受験生が、一般入試で早稲田大学を目指すほうが、より難しくなるのかもしれません。
このあたりが、2021年度の入試でどうなるか?
結局は、ふたを開けてみるまで分からないのでしょう。

どちらになるにせよ、アラフィフの私たちが受験生だったころの常識が通用しない時代がやってくるようです。

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