この記事にたどり着いてくれたキミへ
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の書名検索で、この記事にたどり着いてくれた高校生でしょうか。
AIと自分の将来の仕事について関心のあるキミに、この記事が少しでも役に立てばと思います。
東ロボくん、頑張る
国立情報学研究所という研究機関で、AI(人工知能)が東大に合格できるかという研究を進めていました。
2011年に始まった研究は、幾多の課題を乗り越えて、2015年の進研模試「総合学力マーク模試」で以下のグラフにある結果を出すことができました。
なんと数学と世界史では偏差値60以上をたたき出し、8科目の総合でも57.8という結果だったのです。
このことが示すのは、表層的な理解しかできないAIに、進研模試を受けた高校生の半分以上は「点数では」負けてしまったということです。
このあたりの詳細は、新井紀子氏の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んでみてもいいですし、TEDでの講演を見ても良いと思います。
教科書が読めるか
ここで問題視されたのは、AIがいつ人間を超えるかといったような話ではありません。
意味を理解できず、表層的にしか入試問題を捉えることができないAIに、なぜ多くの高校生が負けてしまったのかということです。
大学入試問題を解くことで見えてきた、中学生や高校生の問題点。
それは、教科書レベルの文章でも「読解できない」という問題なのです。
次の問題を解いてみてください。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
【問題】以下の( )に入る言葉を選びなさい。
セルロースは( )と形が違う。
A: デンプン
B: アミラーゼ
C: グルコース
D: 酵素
中学生と高校生に、実際にテストした結果は、以下のようになったそうです。
(出所:国立情報学研究所 新井紀子氏の講演資料より)
これは高校の生物基礎の教科書に載っている文章を使って、中学生と高校生にテストをしたものです。
デンプンはグルコースからできている。
セルロースはグルコースからできている。
アミラーゼはデンプンは分解するが、デンプンと形が違うセルソールは分解できない。
ということを述べた文章です。
注意深く読めば、決して難しい文章ではありません。
それなのに、正答率がこんなに低いのです。
つまり、教科書レベルの文章を、正しく読み取れていないのです。
AIで代替されないために
現在は、画像認識や音声認識など、AIのための要素技術が、日々進化しています。
以前よりもはるかに優秀になっているコンピュータですが、本当の意味での人工知能、つまり人間の脳を代替するコンピュータに到達するために、まだまだ長い時間がかかるはずです。
しかし、現状のコンピュータでも、人間が行うことのかなりの部分は代替できるようになってきているのです。
そうしたコンピュータに代替されないためには、その苦手とするところ、「意味を捉えて読解する」ことを、人間が行う必要があります。
しかし、先ほどのテスト結果のように、教科書レベルの文章でも、正しく読めない中学生や高校生がたくさんいることも現実なのです。
将来、AIに仕事を奪われないためにも、キミには論理的な文章を読み、そこから考えたことを相手に伝わるような文章で表現するといった能力を、しっかりと身につけてほしいと思っています。