ケヴィン・ケリーという人
『WIRED』という雑誌の元編集長で、ビジョナリーとして有名なケヴィン・ケリー。
『テクニウム』や『〈インターネット〉の次に来るもの』といった有名な著作がありますが、今回はインタビュースタイルでまとめられたものです。
次なる5000日
次なる5000日(約13年)で、新たなテクノロジーとともに新たな世界が訪れることを主題に語っています。
それがミラーワールド。
拡張現実(AR)の技術によって訪れるといっています。
最近ゲームなどで利用されているのは仮想現実(VR)で、こちらは現実世界とは切り離された仮想の世界を体験するものです。
それに対して拡張現実(AR)は、現実の世界にさまざまな情報を重ね合わせて見るものです。有名なのはポケモンGo。実際の部屋のなかを見ているところに、家具のデジタル画像を配置してイメージを理解するのも、このテクノロジーによるものです。
マイクロソフトのHoloLensは、さらに現実空間と仮想空間の混ざり具合を強めた複合現実(MR)を目指しています。
こうしたARやMRといったテクノロジーが、ミラーワールドをもたらすと考えています。
ところで過去を紐解くと
これまで5000日(約13年)は、どんな時代だったのでしょうか。
2007年にiPhoneが発売され、それまでの携帯電話の時代から大きく変化しました。
それまでの電話とメールが主体の時代から、スマホ上のアプリでさまざまな体験ができるようになったのです。
SNSもその一つ。人々のつながり方が、アナログからデジタルに大きく変化しました。
そして日常生活におけるいろいろな「コト」が、デジタルで実現されるようになりました。
買い物だけでなく、健康維持も、エンターテインメントも。
スマホ一台あれば、ほぼ満たされる時代になったのです。
では、その前の5000日(約13年)は、どんな時代だったのでしょうか。
1995年にWindows95が発売され、一般の人々もNetscapeやInternet Explorerを介して、インターネットの世界につながることができるようになりました。その結果、世界中の情報にアクセスできるようになったのです。
携帯電話の世界でも、1990年代なかばに第2世代移動通信システム(2G)のサービスが開始され、デジタル通信が本格化し、2000年代の第3世代移動通信システム(3G)サービスへとつながっていきました。
インターネットとデジタル通信により、人々のコミュニケーションや情報のやり取りが、大きく変化した5000日だったのです。
そうやって考えると、これからの5000日がたった2030年代なかばには、まったく違う世界が訪れていると考えても不思議はありません。
一度、谷底に降りるしかない
この本の主題は、次なる5000日での変化についてなのですが、ボク自身が響いた部分は、少し違うところにありました。
成功することで、現状から外に出ることが難しくなってしまうのです。現状からちょっと無理して成長することは可能かもしれませんが、どこか別のところに移ることはとても困難です。そっちに移動することは生死に関わることです。
また貧乏になり、愚かになり、初心者になり、落ちぶれてお金も儲からなくなる。成功すればするほど、完全さを求めます。より成功したら、その完成度を上げたくなるだけです。完成したものにちょっと手を加え、もっと高度なものにしようと考えてしまう。
しかしレベルを上げるには、まずはいったん下げなければいけません。次のレベルに行くには、いったん谷底まで下りてまた登るのです。しかし、それができません。しかしこうして下りることは、成功者にとっては成功を否定するものなのでできないのです。
大企業でイノベーションを起こせない理由としてもそうですが、人生において新たな挑戦をするという意味でも、同じだと思います。
ある程度の収入を得られるようになると、それを減らしてまで、新たな挑戦をすべきなのかは、正直なところ難しい判断です。
しかし「次のレベル」を目指すのであれば、谷に降りることも辞さない覚悟が必要なのだと、あらためて自分に置き換えながら考えさせられました。
これから残りの人生で
そして、残りの人生を日数でカウントすることに触れています。
残りの人生で、あとどれだけのことができるのか。
セカンドライフを考える意味でも、とても勇気づけられる本でした。