ジャック・アタリの言葉に心打たれる

ミライ科

1月を思い起こすと

1月のころは、雪不足でスキー場が苦しんでいるというニュースを見ていたのですが・・・
この3ヶ月ほどで、世界の風景がまったく変わってしまいました。
年明けごろから、武漢での原因不明のウィルス拡大のニュースは流れていましたが、局地的な感染というイメージのほうが強かったと思います。
ただし、春節を迎えることもあり、中国と世界での人の往来が増えることに、不安を感じていたのは確かです。
そして武漢在住の日本人をいかに退避させるか、チャーター便の検討をされていたのも、1月末のことです。
いずれにしても、中国での感染拡大に目が向いていた時期です。

2月を思い起こすと

2月早々、銀座の街には異変がありました。例年であれば、春節で中国人観光客が大勢訪れている時期ですが、ほとんど見かけなくなりました。デパートの化粧品売り場でも、店員さんが暇そうにお客さんが現れるのを待っているという、普段では想像もつかない景色だったのです。
このころからインバウンド需要が減少し、日本経済にも悪影響を及ぼすという話が出ていました。
そうこうするうちに、クルーズ船のニュースで持ちきりとなりました。
ダイヤモンド・プリンセスが、1月後半からのクルーズ旅行の帰路、船内での感染拡大が疑われたのです。

2020/1/20 ダイヤモンド・プリンセス 初春の東南アジア大航海16日間
1 1月20日(月) 横浜
2 1月21日(火) クルージング
3 1月22日(水) 鹿児島
4 1月23日(木) クルージング
5 1月24日(金) クルージング
6 1月25日(土) 香港(中国)
7 1月26日(日) クルージング
8 1月27日(月) チャンメイ(ダナン/フエ)(ベトナム)
9 1月28日(火) カイラン(ベトナム)
10 1月29日(水) クルージング
11 1月30日(木) クルージング
12 1月31日(金) 基隆(台湾)
13 2月1日(土) 那覇
14 2月2日(日) クルージング
15 2月3日(月) クルージング
16 2月4日(火) 横浜
この旅程を見ると、二週間ほどで東シナ海、南シナ海を巡る、ちょっと贅沢な船旅です。リタイアした老夫婦が、子どもから「お疲れさま」と言われてプレゼントされそうな旅です。
そんなクルーズ旅行が、たいへんなことになったのです。

そして日本国内でも、徐々に感染者数が増えていきます。前半のころは、中国からの旅行者と接触があった人など、たまたま感染者との接触があったような、限られたシチュエーションとしかとらえていなかったと思います。
しかし2月後半になると、北海道での感染拡大がニュースとなり、札幌雪祭りでの感染が表面化してきていたころでした。またスポーツジムでの感染など、感染が拡大するパターンがいくつも取りあげられるようになりました。
さらに、イタリアでの感染拡大がニュースで多く取り上げられるようになり、海外へ旅行するのはまずいのではないかと、判断に苦しむ時期となっていました。学生の卒業旅行や春休みの留学を目前に控えた時期で、払った費用は戻ってこないのにキャンセルすべきかどうか、悩んでいたことと思います。

3月を思い起こすと

3月早々に大阪クラブハウスでの感染拡大により、クラスター感染がいっきに話題になるようになりました。とにかく密室空間で長時間いると、感染が拡大することを意識するようになったのです。企業でも、長時間の密室会議は避ける、大人数が集まるイベントなどは中止されていきました。そして公立小・中・高等学校についても、3月2日から春休みまでの休校要請が出されました。スポーツジムが、続々と休館になっていきました。
しかし3月半ば過ぎまで我慢すれば、もう大丈夫だろうという雰囲気の漂っていたころです。実際に、3月前半に自粛していたような部分でも、消毒などの感染対策をしっかりすることで、中旬からは徐々に再開していました。そうした流れで迎えた3連休から、がらっと状況が変わったのです。
3月に入って、欧米では爆発的な感染拡大が進みました。そのニュースで日本国内も持ちきりでしたが、海外に駐在している日本人家族などの帰国が3月に入って一気に進んだのです。日本時間3月9日午前0時以降に中華人民共和国又は大韓民国、3月21日午前0時以降にヨーロッパ諸国又はエジプト、3月26日午前0時以降に米国からの帰国者に対して水際対策を開始したものの、すでに手遅れであったことと、その内容も不十分だったので、帰国者を起点とした感染が進んでしまいました。それが3月後半に感染者数が拡大した、一つの要因であったと推測します。
そして3月25日に小池都知事が「ロックダウン」に言及したことから、東京など感染拡大が顕著な地域での危機感が高まっていったのです。
しかし、そのころは愛知の知人に「東京は大丈夫?」と質問されていたくらいなので、まだまだ日本全国での危機感という状況ではありませんでした。

そして4月に入っても感染は拡大するいっぽうで、4月8日の7都府県に対する緊急事態宣言、そして4月16日には全国に緊急事態宣言を出すことが決定しました。

さすが、NHK

そんな緊急事態で人々が困惑している中で、NHKは4月11日にEテレで素晴らしい番組を放送していました。
ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」
歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏、政治学者のイアン・ブレマー氏、そして経済学者・思想家のジャック・アタリ氏。
その3人に、NHKの道傳愛子さんがインタビューをした1時間番組です。
これからの世界で、ポピュリズムや民主主義の危機とどう立ち向かっていくのか、考えさせられる番組です。ジャック・アタリ氏の「利他主義は合理的利己主義にほかならない」という言葉は、いまの私たちがどう生きるかを端的に言い表した言葉だと思います。マスクをする。ソーシャルディスタンスをとる。こうした行動は、単に自分を守るためという考えではなく、他の人を守ることが、自分を守ることになるのだということを、あらためて感じます。

5月2日にEテレで午後3時から再放送するそうなので、見逃した方はぜひご覧ください。

ジャック・アタリ氏の最後の言葉が力を与えてくれます。

「しかし人類は未来について考える力がとても乏しく また忘れっぽくもあります。問題を引き起こしている物事を忘れてしまうことも多いのです。過去の負の遺産を嫌うため それが取り除かれると これまで通りの生活に戻ってしまうのです。人類が今 そのような弱さを持たないよう願っています。私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要があります。それがカギです。誰もが 親として 消費者として 労働者として 慈善家として そしてまた一市民として投票を行うときにも 次世代の利益となるよう行動をとることができれば それが希望となるでしょう。」


2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ!

タイトルとURLをコピーしました