東大の一強が意味するところ

カンガエル科

この記事にたどり着いてくれたキミへ
どんな検索ワードで、この記事にたどり着いてくれたのでしょうか。
高校生のキミであれば、多様性ということを考えるためにも、ちょっとだけ目を通してくれればと思います。

日本の科学研究費

まずはインパクトのあるデータから。

出典:『我が国の研究費制度に関する基礎的・俯瞰的検討に向けて 論点整理と中間報告』
(独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター)

これは、科学研究費を各大学にどのように配分しているかを示したグラフです。
横軸が各大学の順位、縦軸が1位の大学の研究費を100としたときに各順位の大学がどれくらいの割合かを示しています。
ドイツであれば、1位の大学を100としたときに、10位の大学でも78、30位の大学でも40を配分されていると見ます。
さて日本はどうかというと、1位の大学を100としたときに、5位の大学でも35、10位の大学で17、30位にいたっては5程度しか配分されていません。
1位はもちろん東京大学、2位は京都大学となるのですが、東大に集中配分されている実態をよく示しています。

多様性の欠如

このグラフを、大学受験の塾や予備校が説明に使うと、「ですから、ぜひ研究費の多い東京大学を目指しましょう。」ということになるのです。
しかし、このグラフが示している本当の問題は、日本の大学における多様性の欠如です。
多額の研究費を必要とする先端的な研究は、東京大学や京都大学、あるいは旧帝国大学でしか実現できず、多くの大学では民間の研究資金を集めるなどしなければ、十分な研究もできない状況です。(旧帝国大学でも民間の資金は必須ですが)
いっぽうのドイツでは、それなりに研究開発費を配分されている中堅大学の層が厚く、それぞれが研究の多様性を生み出しています。

モノの例えとして

もし企業が新規ビジネスを立ち上げようとして、東京大学卒、40代、男性のみ5名のチームを作ったとします。
このチームが、何か新しいイノベーションを起こすと想像できますか?
ちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、調査と議論ばかりで、何も発想が出ず、新しいものが生み出されると思えないのは、私だけでしょうか。
多様性が欠如しているというのは、こういう状態です。
企業の中で予算を取ってくるシニア、若手を引っ張るミドル、他の企業とのチャネルを持つミドル、新しいことへの感度が高い若手などが集まって、それぞれの強みを生かしてチームの成果を出すほうが、よっぽど新しいものが生み出される気がしてきませんか。
大学間の多様性というのも同じです。
勝手で稚拙な想像で書きますが、たとえば
鹿児島大学であれば、シラス台地に含まれる豊富なケイ素を利用して、新たな機能を持つ高機能材料を開発して、技術進展に貢献する。
琉球大学であれば、地の利を生かして、中国・台湾・東南アジアの優秀な研究者を多数招聘して、いくつかの先端領域で研究成果を出す。
といったように、多様なアプローチで研究開発を進めていくことが、イノベーションには重要だと思います。
大学入試という難関を突破してきた地頭の良い学生でなければ、イノベーションが起こせないわけではありません。
そして優秀な研究者がいれば、そこに若手の優秀な研究者が集まってくるはずです。
しかし研究資金のないところに、優秀な研究者はなかなか集まってはくれません。

国全体の問題であり、キミの問題でもある

日本を覆う停滞感の一つの理由は、この多様性の欠如だと私は考えています。
誤解を恐れずに言えば、日本人は、あうんの呼吸で進められることに安住して、あえて多様性を避けてきたと思います。均一というのは、本当に効率が良いですし、そこに所属するメンバとしても余計なことを考えずに済みます。
そのムラ社会に縛られるのが嫌な人は、だいたい外の世界へと出ていってしまいます。
欧米に追いつき追い越せの単一目標を持っていた時代は、それでうまく回っていました。
しかし、現代は「答えのない」時代です。
多様性を受け入れることができなければ、変化を起こせない時代なのです。
ぜひキミには、多様性を恐れず、多様性の中に飛び込んで、自分の考えを発信する人間になってほしいと思います。

はるか大昔、日本人だって多様な民族の集合体だったのですから。

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